私の10回目となるフィールドスタディは10月11日でした。
10年も継続して講義をさせていただいているのに、他の3カ所のフィールドスタディに今まで参加したことがなかったので、今年は参加させていただきました。
9月20日 福井市の福井県済生会病院
9月27日 北九州市の小倉リハビリテーション病院
10月4日 岡山県倉敷市の倉敷中央病院
最近は他法人の施設を見学すると粗ばかりが気になり、ネガティブな見方をしてしまうことが多いのであまり行かないのですが、今回の3カ所は、いずれもトップレベルの病院ですから、それぞれに気付きと学びの多い時間となりました。
気付いたこと・・・
最初の福井県済生会病院は、「競合」です。
福井市内には、県立病院、大学病院、日赤と4つの病院が競合しており、病院の特徴をどう活かすのかの説明は勉強になりました。
福井済生会病院以外の3病院は赤字で、3病院とも最新機器のダビンチを導入していますが、導入してもダビンチの採算をとるのは難しく、福井県済生会は「うちはダビンチよりスタバです」と病院内にスターバックスを誘致され、大好評とのこと。
お客様の声、従業員の満足度調査、表彰制度など顧客と職員を大切にしているのがよく伝わってきました。
また、次の日に済生会フェアが予定され、フェアの会場準備を済まされていました。
外の駐車場などで行われ、施設内は解放しないスタイルが多いのですが、病院全体が会場で、各診療科も仕事内容を参加者に理解していただけるように準備をされていて、オープンホスピタルの日とでもいうのでしょうか、役職員の方々の「うちは地域に根ざした病院です」という意識が随所で感じられました。
うちの法人でも、祭りに力を入れていた時期もありますが、業務量の増加、人員などの関係で縮小しています。こんなに大きな病院が大規模にやっていることに敬意を表したいです。
小倉リハビリテーション病院は、「哲学」です。
日本のリハビリテーションの先駆者、権威であり、小倉リハビリテーション病院の名誉院長である浜村 明徳院長からじっくり話を伺うことができました。
病院内だけではなく、地域医療のネットワークにもリハビリテーションの理念を浸透されている病院のあり方はなかなか真似のできることでなく敬意を表したいです。
ただ、将来も浜村先生の薫陶をうけてきた役職員・地域のネットワークがこの理念・哲学を継承していけるのか、カリスマ経営者の後継問題は大きいとも感じました。
倉敷中央病院は、「誇り」です。
正式名称は、公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院。
創立者は、当時の倉敷紡績社長で大原美術館なども設立した大原 孫三郎氏です。
東洋一の病院を作りたいという思いから、大原 孫三郎氏は、病院設立に先立ち、当時の京都大学総長で岡山の第三高等中学校医学部へ赴任したこともあった荒木 寅三郎氏と基本方針を検討し、その後、荒木氏によって京大医学部から多くの人材が派遣され、現在に至っています。
1,200床を超える大病院でありながら、見学の際にどこを回っていても、よく病院で目にする雑然感はなく、床も壁もぴかぴか、掃除が行き届いているなどとはレベルが違いました。
絵画、温室、観葉植物、熱帯魚の水槽・・・、これらの維持費を考えただけで、いくらになるのだろうと思ってしましいました。
それを支えているものは、歴史と東洋一の病院という「誇り」です。
ただ、諸事情により、今年から公益財団法人日本医療機能評価機構のトップ評価である「S」の取得できなくなっており、この先どうされるのだろう・・・とそれが気になりました。
誇りって、内部の評価と外部の評価の両方により維持されるものなのでは・・・
※公益財団法人日本医療機能評価機構は、国民の健康と福祉の向上に寄与することを目的とし、中立的・科学的な第三者機関として医療の質の向上と信頼できる医療の確保に関する事業を行う公益財団法人です。
評価S(秀でている)は、評価項目の達成度が優れていて、かつ、その評価項目に関連して 病院独自の優れた取り組みがある場合の評価です。
変化の荒波の中で、社会福祉法人・医療法人に限らず、イノベーションが必要です。
P.F.ドラッカー先生は、その著書『非営利組織の経営』の中で非営利組織がイノベーションに成功するための3つの条件をあげておられます。
第1は、変化を、脅威ではなく機会と見ること
第2は、コミットしてくれる力のある責任者を探すこと
第3は、戦略を持つこと
ドラッカー先生は、力のある責任者を探せ・・・と言われていますが、簡単に見つかるわけもなく、今現場で運営に責任を持つ者が、変化を脅威でなく機会と捉え、それに対応する戦略を立て、責任を持って戦術を実行するんだという気概を持つ必要があるのでしょう。
気持ちが変われば、行動が変わる、行動が変われば周囲も変わる、その輪が広がれば組織は変われますから・・・。
歴史を守り、誇りと哲学を胸に、他社と競い、この荒波を乗り越えていく覚悟が必要です。
追記
10月11日の私の講義は、毎年のことながら自身では良かったのか悪かったのか分かりません。その時その時の課題をストレートにお話ししているつもりですが・・・
終了後、師匠である小山 秀夫先生から
「小林先生 今日も講義最高です。こんな講義聴ける院生はシヤワセです。全てがリアル、本当の経営です。講義は命懸けでやるもので、一般論とか、浅はかな教員の自慢話では人の心は動きません。私は命懸けで講義してきましたので本物は分かります。感謝です。社会福祉事業はいいよ!」とメールをいただきました。
さらに精進しなければ・・・です。
2025年11月
社会福祉法人 鶯園
理事長 小林 和彦
