理事長ブログ

ミュージカル「異国の丘」

今年のお盆は、劇団四季の『異国の丘』のDVDを見ました。

悲しい、悲しいミュージカルです。

この作品は、西木 正明氏の『夢顔さんによろしく』(文藝春秋)に着想を得た浅利 慶太氏の演出です。

作曲家 吉田 正氏の『異国の丘』も劇中歌として歌われます。また、吉田 正氏をイメージさせる「吉田さん」という名前の登場人物が語り部となり物語は進行していきます。

戦後、満州からシベリアに抑留された捕虜たちの物語です。

主人公は、実在する人物で総理大臣も務めた近衛 文麿氏の長男、近衛 文隆氏がモデルです。劇中では「九重 秀隆」として登場します。

日本の総理大臣の息子である九重 秀隆と、当時の敵国・中国の指導者の姪である美貌の令嬢・愛玲との許されざる恋の物語です。互いの国の幸せと平和を願い、生命を賭けて和平工作に身を投じた秀隆は、戦後11年間にわたり極寒のシベリアに抑留された後、ついに帰らぬ人となります。「なぜ彼はシベリアで死ななければならなかったのか・・・」というあらすじです。

エンディングは、劇中で亡くなった役の方も登場しての歌・・・

『涙さえ凍りつく 最果ての白い野に つながれた我が友よ 明日を信じよう
音もなく降り積もる シベリアの雪の原 魂はさまよいつ 異国の丘に
苦しみの果てに儚く消えた 名もなき命 祈り続けた 愛する人の明日の幸せを
国敗れて山河あり 父母を敬い きょうだい結ばれ
妻を愛し 友を信じ 幼きを守れ 愛しき者たちよ
時は移ろい 命果てても いつかは届け 我がこころの声
いつの日かよみがえる 故郷の青い空 妻よ子よ 父母よ 燃ゆる想いを
いつの日かよみがえる 故郷の青い空 妻よ子よ 父母よ 燃ゆる想いを』

そして、「吉田さん」が語ります。

「あの戦争では名もなき無数の人々が、その青春と未来と、時には全存在をも投げ出さざるを得なかった。秀隆もその一人として死んでゆきました。戦後、日本の驚異的な発展と繁栄は、これら何百万人もの尊い犠牲を礎としてもたらされたものです」

今年は終戦から80年です。

私はネトウヨではありませんが、この『異国の丘』を見るたびに「今の日本人に足りないのは、先人たちへの敬意では・・・」と思わされます。

日本人には、忘れてはいけないことがある・・・

<追記>

当時の時代背景(2025,8,9 産経新聞より)

1945年8月9日未明、日本軍の「最後の戦争」の戦端は、ソ連軍が満州(中国東北部)に侵攻して開かれた。日本が米英との和平仲介をソ連に頼んださなかだ。

日ソは41年4月、中立条約に調印。ソ連は45年4月に条約不延長を通告したが、中立規定は46年春まで有効なはずだった。ソ連がフィンランドに対してと同様、条約を破ったのは明らかだ。

満州侵攻翌日の8月10日、日本はソ連を含む各国にポツダム宣言を受諾する意向を通知している。15日には昭和天皇の「終戦の詔書」(玉音放送)が流れ、9月2日には戦艦「ミズーリ号」で降伏文書に調印した。

第二次大戦末期に旧ソ連が日ソ中立条約を破って対日参戦して9日で80年を迎えた。日本がポツダム宣言の受諾をはじめとして降伏の意思を何度も示す中、ソ連は一切を無視して北方領土まで侵略し、居座った。国際ルールを平然と踏みにじるその姿勢は、ウクライナ侵略を続ける後継国家ロシアの姿と重なる。

2025年8月27日
社会福祉法人 鶯園
理事長 小林 和彦

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