2:衰退する組織・・・
こんなに変化の多い時代の中で、現状維持は後退しているのと同じことであり、そのままの状態が続けば、やがて取り残され、衰退していくのは当然・・・
衰退には5段階がある。
著名なビジネスコンサルタントのジェームズ・C・コリンズ(ジム・コリンズ)氏の『ビジョナリー・カンパニー③衰退の五段階』(日経BP社、2010年)では、「衰退は『突然』ではなく『徐々に』進行する」と分析し、そのプロセスを次の「5つの段階」に整理しました。
1.成功からくる
傲慢:過去の成功が企業全体を過信させ、市場の変化や顧客のニーズを無視する。
2.規律なき拡大路線:
成長を追求しすぎて無計画な拡大を行い、企業の強みを失う。
3.リスクと問題の否認:
問題が表面化しても軽視あるいは否認し、適切な対応ができなくなる。
4.一発逆転を狙う過剰な行動:
焦りから大胆な改革や無理な戦略を追求し、さらなる混乱を招く。
5.組織の崩壊・消滅:
最後には競争力を失い、破産や吸収合併などで市場から退出する。
さらにコリンズ氏は、これらの段階に気付き対応することで、企業が再び成長や成功を取り戻す可能性があり、次の6つのポイントが有効としています。
① 問題を認識し、素直に受け入れる。
② 「成功の傲慢」を捨て、基本に立ち返る。
③ 本業に集中し、強みを強化する。
④ 「一発逆転」を狙わず、小さな成功を積み重ねる。
⑤ リーダーシップを強化し、組織全体で方向性を共有する。
⑥ 市場の変化を見逃さず、柔軟に対応する。
企業を組織に読み替えてみると、コリンズ氏のこのような指摘は、どこにでもあるように思えてなりません。
神戸市と岡山県北部で事業をしていると、岡山県の人口減少にばかり目が行きます。
ただし、少子化は日本全体の問題です。
18歳人口は、1992年に205万人でしたが、2025年1月時点では109万人、2040年には74万人まで減少する見通しです。当たり前ですね、3年前は74万人の出生ですから、プラス15年すれば2040年。予想される未来ではなく、確定した数字です。文科省の中央教育審議会が今年2月にまとめた答申では、大学の統廃合や定員削減を進めて「規模の適正化」を求めています。
厚生労働省が6月4日公表した「人口動態統計月報年計(概数)」によれば、2024年に日本国内で生まれた日本人の子どもの数は68万6061人で、前年より4万1227人減少しています。出生数は、16年から9年連続で減少しており、1899年に統計を取り始めて以降、70万人を下回ったのは初めてのことです。
都道府県別でみても全ての都道府県で減少しています。初めて100万人を下回ったのが16年、90万人を下回ったのが19年、80万人を下回ったのが22年です。
さらに、出生数の減少幅は20年▲2万4404人、21年▲2万9213人、22年▲4万863人、23年▲4万3471人、24年▲4万1227人前年より減少し、少子化に歯止めがかかるどころか、かえって少子化傾向は年々加速しています。
介護や保育の適正化の話もいずれ出てくるのでしょう。
少子化の影響は、人口減少地域だけではなく、都市部においても大きく、組織経営の継続性という視点でもう一度考え直す必要があります。そうした視点で地域を見た時に、医療、介護、福祉、教育の継続性については、もう当事者の経営継続責任のみで捉えるのではなく、みんなで知恵を出し合ってどうしていくのか考えなければならない時期に来ていると思っています。
うちの法人の事業エリアにも継続性について考えなければならないエリアはあります。2040年までに考えたらいいや・・・などということではなく、ここ2,3年のうちにどう対応していくのか決めるつもりです。「選択と集中」が必要であり、判断が非常に難しいところですが・・・。
コリンズ氏の言葉を借りるなら・・・
問題を認識し、受け入れ、基本に立ち返り、本業に集中し、強みを強化する。
そして、小さな成功を積み重ね、組織全体で方向性を共有し、柔軟に対応する。
求められるのは、リーダーシップです。
追記
先日、ある法人(社福ではない)の会長から「私も80歳に手が届く歳になったが、もう一度日本一を目指す、うちの法人の規模は全国で7番目だが、上位法人が行っていない事業に強みがある、そこを強化できれば逆転できる」という話がありました。上位法人が行っていない事業については具体的に書きませんが、日本一の法人に・・・という思いだけではなく、役員の入れ替えを含めて、強みを伸ばすための具体的な方策を示されましたから、私は実現されるのだろうと思っています。まさに、問題を認識し、基本に立ち返り、本業に集中し、強みを強化する。そして、組織全体で方向性を共有し、対応する、です。
2025年6月27日
社会福祉法人 鶯園
理事長 小林 和彦